
看護師の勤務時間の基本
看護師の勤務は患者さんの安全を最優先に、病棟の24時間稼働を前提として設計されています。代表的な形は「二交代制」「三交代制」「日勤のみ」の三つで、病院の規模、診療科、救急受け入れの有無によって細かな運用が異なります。自分に合う働き方を知ることが第一歩です。
二交代制とは
一般的に日勤(8:30〜17:00前後)と夜勤(16:30〜翌9:00前後)で回す方式です。夜勤は1回で長時間になりますが、明け・公休を組み合わせて連続の休息が取りやすく、通勤回数が減るのが利点です。一方で、夜間の覚醒維持と仮眠確保の工夫が不可欠です。
三交代制とは
日勤(8:30〜17:00前後)・準夜(16:30〜0:30前後)・深夜(0:00〜9:00前後)の3つの枠で回します。1回の勤務時間が短く身体負担は分散しますが、生活リズムがこま切れになりやすく、連続勤務の組み方にコツが要ります。
日勤常勤・外来勤務
クリニックや検査部門、手術室・外来などでは「日勤のみ」の募集も多く、土日休みの求人もあります。夜勤がない分、給与水準や手当は病棟常勤より控えめなことが一般的ですが、生活リズムの安定や育児・学業との両立がしやすいのが魅力です。
部署別・施設別に見る勤務時間の実態
同じ「看護師」といっても、ICUと療養病棟、訪問看護と老健では一日の密度も求められる時間帯も違います。自分の体質・得意領域・家庭事情に合わせて選ぶ視点が大切です。
急性期病棟・ICU
救急受け入れや術後管理が多く、交代時間に入退室が重なりやすい領域です。申し送りや処置準備の前後に早出・残業が発生しやすいため、業務の標準化とチーム内のタイムマネジメントが欠かせません。
回復期・地域包括ケア病棟
リハビリや在宅復帰支援が中心で、ナースコールのピークが日中に寄り、夜間は比較的落ち着く傾向があります。早番・遅番を導入してケア密度を均す病院も増えています。
療養病棟・介護施設
慢性期の全人的ケアが中心で、記録・ケア・見守りの比重が高く、夜間も定期的な体位変換や排泄介助が続きます。身体負担を軽減するため、ユニットケアや機器活用による省力化が鍵になります。
訪問看護
日勤帯が中心で、9:00〜18:00前後の事業所が多いです。オンコール待機や緊急訪問の体制がある場合、夜間や早朝に出動する可能性があります。移動時間の読みにくさを勘案して、1件あたりのケア設計を丁寧に行うことが大切です。
スケジュール設計とシフトの組み方
勤務表は患者配置・スタッフ構成・休暇取得の希望を踏まえて数週間〜1か月単位で作られます。自分とチーム双方が無理なく回るスケジュールは、長期的な健康と定着率につながります。
基本パターンの例
・二交代:日勤→夜勤→明け→休み/日勤→日勤→休み など
・三交代:日勤→準夜→休み→深夜→休み/日勤→日勤→休み など
・日勤常勤:月〜金の日勤、土日祝休み、月1〜2回の土曜出勤あり 等
連勤と休息のバランス
連続夜勤は2回まで、深夜明けの翌日は原則休み、月の夜勤回数は○〜○回を上限…といった院内ルールが定められることが一般的です。体内時計の乱れを最小化するため、勤務の並び順や仮眠時間の確保、カフェイン摂取のタイミングをパターン化しましょう。
残業が発生しやすい場面
申し送り、緊急入院、術後急変、家族対応、記録の追記などが定番です。定例業務の前倒し・役割分担の明確化・申し送りの定型化で10〜20分の積み重ねを削ると、月間の残業は確実に減らせます。
休憩・仮眠・リカバリー
忙しい現場ほど休憩は後ろ倒しになりがちですが、パフォーマンス維持の要です。チームで「取れるときに必ず取る」文化を作り、交代要員・見守り担当を明確にして実効性を担保します。
休憩の取り方
日勤は60分、夜勤は仮眠を含めて90〜120分など、就業規則に沿って設計されます。分割休憩でも「水分・栄養・排泄」を欠かさないミニルーティンを用意しておくと、後半の判断力低下を防げます。
夜勤の仮眠
深夜2〜4時に15〜30分の短時間睡眠を挟むと、その後の覚醒度合いとエラー率が改善します。仮眠室の環境(遮光・静音・体温調節)を整え、起床後は軽いストレッチと白色光でリセットしましょう。
勤務外のリカバリー
連勤前後は入浴・ストレッチ・軽い有酸素運動で睡眠の質を底上げし、夜勤明けは「帰宅→軽食→短時間睡眠→夕方に起床→入眠は深夜帯」の固定化がコツです。休みは朝の光を浴び、体内時計を日中寄りに戻します。
ここまで勤務形態・部署特性・休憩方法を整理しましたが、実際には人手配置や季節変動で所定時間どおりに行かない日もあります。そこで重要なのが、業務の優先順位付けと、記録・申し送りのミスを起こさない仕組みづくりです。
働き方を選ぶためのチェックリスト
勤務時間は“条件の羅列”ではなく“生活のリズム”です。求人票と現場の実態にギャップがないか、次の観点で確認しましょう。
面接・見学で聞くべきこと
・二交代/三交代の比率、夜勤回数の上限と平均
・早出・遅出の有無と開始終了時刻、残業の月平均
・夜勤の仮眠体制、休憩の取り方、休憩室の環境
・急変・救急受け入れ時の増員体制と役割分担
・電子カルテの入力ルールと定型文、有事の記録手順
自分の体質・生活との相性
朝型/夜型、睡眠の深さ、偏頭痛や腰痛の既往、家族の送迎や保育園の時間帯、学業や資格勉強の予定など、“外せない制約”を先に洗い出し、応募前に優先順位を決めます。
長期キャリアの視点
若手であれば急性期で経験値を高め、中堅以降は専門領域や教育・管理へと役割を広げるなど、段階に合わせた勤務時間の選び方があります。訪問看護や外来、企業看護師など、ライフイベントに応じて選択肢を持っておくと安心です。
勤務時間を味方にするタイムマネジメント
同じ8時間でも、前半の集中と後半の持久力では戦い方が異なります。自分のピークタイムに重い仕事を集め、落ちやすい時間帯はルーチンに充てるのが基本です。
シフト前日の準備
翌日の患者情報、検査・手術スケジュール、退院・入院予定をざっくり確認し、朝一で動線が短くなるよう準備します。制服・名札・ペンなど持ち物の定位置化も時短に効きます。
勤務中の工夫
申し送り直後に“今日の優先順位TOP3”を同僚と共有し、観察・処置・記録のセット運用で移動のムダを減らします。ナースコールのピーク前に内服・点滴の準備を先に終えます。
記録と振り返り
リアルタイムに近い記録が最少の残業につながります。定型文・テンプレートの活用、音声入力やショートカットの習慣化で記録時間を圧縮し、終業前に安全確認と優先度の棚卸しを行います。
まとめ
看護師の勤務時間は、制度設計(交代制)・部署特性・個人の体質という三層で決まります。形の違いを理解し、休憩と仮眠の質を高め、タイムマネジメントを磨けば、残業を抑えてパフォーマンスを維持できます。求人選びでは勤務時間の実態を現場で確かめ、生活とキャリアのバランスが取れる職場を見つけましょう。
